世の中には、戸籍がない人が存在していることをご存知ですか?過去には、戸籍ビジネスや戸籍 売買、ネームロンダリングといったワードがよく聞かれたものです。ドラマ『カルテット』で、松たか子さん演じる真紀が戸籍を買って、別人になりすましていたという衝撃の展開もありました。ドラマでも描かれるほど、かつては横行していた「戸籍ビジネス」について調べてみました。世の中にあふれかえる「戸籍がない人」たちがどのように生きているのか、救うすべはあるのか、考えるきっかけになればと思います。
「戸籍がない人」ってどんな人?
世の中には「戸籍がない人」が存在しています。戸籍がない人は「無戸籍者」と呼ばれ、親が出生届を出さなかったり、未成年で親の身元が不明だったりする人が該当します。私たちは生まれたときから当たり前のように戸籍があり、学校や会社などさまざまな場所に所属したり、サービスを受けたりしていますよね。そのような「日常生活」もままならないのが「戸籍がない人」です。では、戸籍がないことでどのような影響があるのか見てみましょう。
戸籍がないと免許が取れない
法務局によると、戸籍がない人は運転免許を取ることができません。理由は、運転免許を取るにはまず、住民票が必要だからです。しかし、戸籍がないと住民票が作成されないため、手続きが不可能なのです。運転免許を取るには、無戸籍という状態を解消し、住民票を取得する必要があります。戸籍が作成された後に市区町村役場で「本籍地」を記載することで、住民票が出来上がります。そこで初めて、運転免許の申請ができます。
戸籍がないと家を借りられない
戸籍がない人は、家を借りることができません。家を借りる際には、住民票や身分証明書などを提出する必要があります。家を借りるということには、貸す側(大家)にとってもリスクを伴うビジネスで、なりすましや犯罪への利用を防ぐ必要があります。そのためには、借主の身分証と住民票の写しの提出が必須なのです。戸籍がない人は、これらを証明する書類を用意できないため、家を借りることが不可能に近いのですね。しかし、まれに戸籍がなくても理解を示してくれる管理会社や大家さんもいるようです。
戸籍がないとアルバイトすらできない
戸籍がない人は、アルバイトすら難しいことがあります。これは国の制度がアップデートされたことが理由で、マイナンバーカードを提出しなければいけないケースが増えたからです。戸籍がない人はマイナンバーカードも作成できないので、アルバイトをすることさえ難しい人も。さらに、アルバイトや就職のために自身の証明書類を集めている最中に、自分が無戸籍だということを知るパターンもあるそうですよ。
参考:日本財団ジャーナル
戸籍ビジネスとは
戸籍がない人たちと深くかかわっているのが、戸籍ビジネスです。戸籍ビジネスとは、自分の戸籍、本名や生年月日といった戸籍謄本上にある「その人であるという証明」を売る行為です。売り買いといっても、ただ戸籍簿を売るわけではなく、その本人である証明を渡すということなので、要は「個人情報を渡す」ことになります。ダイヤモンドオンラインによると相場は100万円〜150万円といわれており、ビジネスとして利用する人がいるのですね。
戸籍を売るとどうなる?
戸籍を売るということは、日本における「自分名義の権利」を売るということ。しかし、戸籍売買自体が違法行為なので、その人の戸籍上の身分が消滅することはありません。つまり、戸籍を売った人が公認している状態で「誰かのなりすまし」が存在することになるのです。主な理由は偽装結婚するための「日本人配偶者ビザ取得」が目的といわれ、公正証書原本等不実記載罪という犯罪になります。死体遺棄より重い罪で、偽装結婚に加担した売った日本人も共犯となり、出入国管理及び難民認定法違反となるようです。
戸籍を買うとどうなる?
戸籍を売る人がいるということは、その戸籍を買う人がいるということです。戸籍を買うというのは、その名義人の代わりに「その人になり生きていく」ということを理解しておく必要があります。無戸籍者は、事情があって出生届が提出されていない人たちをはじめ、国籍の問題で戸籍がない人、出産時のトラブルにより出生届が受理されない人、さまざまな事情があります。しかし、戸籍がない人たちの解決策は「戸籍を買うこと」ではありません。刑事処分の対象になるなど、法的に無関係ではいられない可能性が高いのです。
ネームロンダリングとは?
過去に、東京都在住の知的障害者の男性が、本人に覚えのない偽装養子縁組を何度もさせられ、姓が変わる度に犯罪に悪用するための銀行口座が開かれていたという事件があったそうです。元々、養子縁組は嫡出子への財産相続や養育環境を保全することが主な目的とされていましたが、この制度が悪用され戸籍・姓名の偽装に使われるケースが多くなりました。ロンダリング(laundering)のことで洗濯する、きれいにするといった意味があり、ネームロンダリングも主には不正を隠す、犯罪行為をカモフラージュする手法として使われているようです。
なぜ戸籍がない人がいる?
戸籍がない人が戸籍を買ったり、その戸籍を売る人がいたりするのは、どうしてなのでしょうか。どのような仕組みで戸籍ビジネスが行われていて、需要があるのはなぜなのか、調査してみましょう。戸籍がない人はよほどの事情があったり、理由があって親がいなかったりするイメージがあるかもしれませんが、実はもっと身近なところに、戸籍がない原因が隠れていました。
嫡出推定制度による無戸籍
嫡出推定制度は、女性が離婚して300日以内に子どもを産んだ場合、その子どもの父親が誰であっても、出生届を出すと前の夫の子どもとして扱われるという制度です。前の夫の子どもとして扱われることに不都合がある場合、子どもの両親はあえて出生届を出さない選択をするようです。実際、小学校・中学校は義務教育なので、戸籍がなくても通うことができるそうですよ。
国際結婚による無戸籍
両親が日本国籍を持っておらず、無戸籍になるケースがあります。また、産んだ母親が外国籍で父親が日本国籍の場合、父親が認知すれば子どもは父親の戸籍に入ることができますが、認知しなかった場合、無戸籍になります。オレンジ法律事務所によると、過去には男女のうち男性が日本国籍である場合のみ、子どもが日本国籍を取得できるという制度があったようです。昭和60年に法が改正され、男女のうち女性が日本国籍である場合にも、子どもが日本国籍を取得できるようになりましたが、それ以前に生まれた子どもは無戸籍のままなのだそう。
まとめ
最近ではあまり耳にすることがなくなった戸籍ビジネスに関するワードですが、それでも実際に闇の中でやり取りはあるようです。臓器売買もそうですが、戸籍売買も闇に包まれていて、知れば知るほど恐ろしいビジネスであることが分かりました。戸籍売買は違法行為であり、刑事処罰の対象になる可能性があると理解し、巻き込まれないようにすることが大切です。個人情報の取り扱いには、十分注意しましょう。












